秋田県の食文化に根付いてきた県の魚・ハタハタの記録的不漁が続いています。
今後の資源量の変化を探る鍵となるのが、県水産振興センター(男鹿市)が長年にわたり実施している各種調査です。
本連載では、センターの研究者がこれまでの調査の蓄積や成果を紹介し、ハタハタ資源管理の在り方や漁の今後を考察します。
次回は22日に掲載。
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本県のハタハタ漁獲量の減少傾向がここ10年ほど続き、2024年は17トンで過去最少となりました。
1894(明治27)年から記録が残る本県のハタハタ漁獲量は、これまでにも1209年、50年、80年ごろを境に約30年周期で大きく変化してきました。
63年から75年までの13年間は毎年1万トンを超える豊漁だったが、その後は急激に減少。
80年代は低迷したまま、91年に70トンまで落ち込みました。
この記録的な不漁を受け、本県漁業者は92年9月から95年9月まで、ハタハタの全面自主禁漁に取り組みました。
95年に漁を解禁して以降は2002~09年にほぼ毎年2千トンを超えるまでに回復したため、この禁漁を水産資源管理の優良事例としてご存じの方も多いでしょう。
ただ、10年ごろから再び減少に転じ、昨年の記録的な不漁へと続いています。
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漁獲量は、海にいるハタハタが多い、少ないという資源量によってのみ決まるものではありません。
漁業者の数や操業回数、漁具の性能といった「漁獲圧力」(魚を取る力)も影響します。
ハタハタがたくさん取れたとしても、それは漁業者が数多く操業した結果かもしれないし、反対に漁獲量が少なくても、操業数が少なかったことが理由かもしれないのです。
すなわち、漁獲量が資源量そのものを表しているとはいえないのです。
本県のハタハタの漁獲圧力がどう変化してきたかを知るため▽漁業者数▽底びき網船数▽小型定置網数▽刺網船数―のそれぞれの推移と、漁船や漁具の性能の変化をまとめてみましょう。
本県の漁業者数は1975年の4,576人をピークに減少傾向にあります。
2023年は630人で、約7分の1です。
ハタハタ漁底びき網船の隻数は1964年の148隻に対し2024年には17隻で8分の1未満。
小型定置網は1977年の624統に対し2024年には29統で約21分の1、刺網船は1997年の375隻に対し2024年には27隻で約13分の1になりました。
この中で、小型定置網と刺網船は数の変動が大きい。小型定置網は1982年まで500統を超えていたが、83年から急減し、禁漁直前には58隻となりました。
漁再開後は2005年に249隻まで増え、再び減少に転じました。
刺網船は1980年代に増加し、禁漁直前は146隻でした。
漁再開後にさらに増え、2003年まで300隻ほどの高水準で推移。
近年の著しい不漁の中でも減少は緩やかでした。
このように漁法によって増減の傾向が異なるのは、船や漁具の導入・運用にかかる費用や、操業に必要な人手の数のほか、ハタハタ資源量や魚価の影響も受けていると考えられます。
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漁船や漁具の性能は時代とともに向上しました。
昭和初期以降、漁船の動力化や耐久性が高い綿糸網などの導入が進み、1人当たりの漁獲圧力は高まりました。
特に1970年代以降は船体が木造から繊維強化プラスチック(FRP)製に置き換わり、耐久性が向上。網を巻き上げる油圧ウインチなど漁労機械の導入に加えてナイロン網も普及し、効率化と省力化が進んだ。漁業者1人当たりの漁獲圧力は飛躍的に向上し、現在とほぼ同水準に達したと考えられる。
75年以前の漁業者数が不明なため推測も含まれるが、過去にハタハタ漁獲量が大きく変動した背景を、漁獲圧力と対比して整理すると、
(1)1960年ごろまで=漁業者1人当たりの漁獲圧力が現在よりかなり低く、資源量と漁業者数によって漁獲量が決まった時期(2)60~70年代=資源が豊富な中、現在の7倍もの漁業者がいて、個々の漁獲圧力も高まったために漁獲量が大幅に増えた時期(3)80年代=現在とほぼ同じ漁獲圧力でも漁獲量が低迷した資源が少ない時期―と解釈できます。
漁獲圧力を加味して考えると、95年の漁解禁以降の漁獲量も見え方が変わります。
底びき網船1隻当たりの年平均漁獲量は、2003~09年が25・3トンであるのに対し、1963~75年は26・1トンで同程度。
つまり、1隻当たりの漁獲圧力は同等です。
それなのに、ハタハタ漁獲量は2003~09年がほぼ2千~3千トン台、1963~75年は1万トン超と大差があります。
これは漁船数の差の影響が大きいと考えられます。
両期間において本県沿岸に産卵のため来遊したハタハタ資源量は、実はかなり規模が近かった可能性があります。
一方で2020年以降は底びき網船数がほとんど変わっていないのに、漁獲量は大きく減りました。
このため、近年はハタハタ資源が顕著に減少しているとみられます。
漁獲量が最も多い小型定置網漁では漁解禁以降、ハタハタが大量に網に入っても、雌が少ない場合は漁獲枠に含まれないように水揚げしないことも多く、結果的に漁獲量が抑えられたことも考えられます。
(県水産振興センター・甲本亮太)
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<三浦個人の意見/感想です>
ハタハタ漁獲量の推移ですが、大変貴重なデータなので参考にしてください。
(2)も是非お読みください。
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