今月11日に秋田市で開催された県ハタハタ資源対策協議会で、県水産振興センターは今漁期(2025年9月~26年6月)のハタハタ漁について「資源量がほとんどなく、漁獲はほぼない」との見通しを発表した。 漁業関係者はこれまでもさまざまな自主管理に取り組んできたが、2009年以降の資源の減少を食い止められなかった。 特にハタハタのみを対象に、人手が必要な定置網漁、刺網漁を行う漁業者は、経済的に一層困難となる事態に直面している。
◇ ◇ 1995年の禁漁明けから30年。 私たちはその間、本県沿岸に来遊するハタハタ資源の急激な増大と、その後の減少を目の当たりにしてきた。
2022年、水深100メートル付近に設置された刺網に産み付けられたハタハタの卵
漁獲量が500トンを超えた1998年ごろから、特に沿岸では漁獲枠の超過が問題視されるようになった。 漁獲枠を超過した漁業者が、枠を達成していない漁法・地区の漁業者に枠を譲るよう求めるなど、資源利用において漁業者の間で不公平感が生じた。
1995~98年は漁獲枠を沿岸と沖合で半分ずつ配分したが、沿岸の漁業者数が沖合より多いことを理由に、1999年に漁獲枠の割合を沿岸6、沖合4へと変更。 また沖合は操業期間を年間6カ月から8カ月に広げた。
こうして漁獲量が増えて魚価が下がり始めると、沿岸では市場価値が高いブリコ(抱卵)雌を選別して出荷し、価値が低い雄は市場外で流通させる動きが広まった。 漁獲量の数字と実態が乖離(かいり)し、データの精度が低下し始めた。
ハタハタは普通、日光が届く水深数メートルの海底で海藻類に産卵するが、2016年ごろから水深100メートルより深い所でも産卵している例が、県北部や男鹿半島沖で確認されるようになった。その卵を回収して管理したところ、写真のように正常に発育した
漁獲量が千トンを超えた2000年以降はハタハタが取れる地区が増え、1日で100トン以上水揚げされる地区や、一晩で漁獲枠を超える地区も出てきた。 結果、魚価は暴落し、雌の選別出荷と雄の市場外流通はさらに深刻化した。 こうなると漁業者の間には県が推定する資源量を疑問視する見方が強まり、漁獲枠の超過はやむを得ないとの声も出るようになった。 さらに漁獲量が2千トンを超えた2003年以降の協議会では、漁業者の感覚を加味し、推定資源量をより大きくするよう求める意見が出た。
しかし、こうした情勢は2009年、ハタハタの平均単価が解禁以降最安値となったことを受けて変化し、漁業者から漁獲枠の削減を検討すべきとの意見が出始めた。 この頃、ハタハタが1歳まで生き残る割合は年によって大差があることが分かり、センターは1歳魚が少ない年が続いて資源が減少し続ける可能性を懸念。 1歳魚が豊富となる年に十分な数の親魚を残す必要があると考え、漁獲枠の縮小を提案した。 1歳魚を網から逃がすため、網目を大きくするなどの漁具改良にも着手した。
既にこの頃、漁獲枠を達成できない年が出始めていた。 原因を探ったところ、それまでの計算方法では1歳魚の資源量が多めに算出されてしまうことが分かり、親の量を基準に推定する方法に修正。 2016年以降は漁獲枠を大幅に下回ることはなくなった。 それでも漁獲量の減少傾向は続いた。 漁獲枠が減り配分も困難になる中、2017年以降は漁獲枠の算定基準や配分方法を変えたほか、共同操業の実施や漁期の短縮について検討と試験導入を進行。 2021年の協議会で、漁獲枠管理から現在の漁獲努力量管理(漁具の大きさや数、操業区域や期間の管理)に移行することが決まった。 ◇ ◇ この30年の漁獲量の推移を見ると、解禁から7、8年で増大した資源はおよそ10年間、高水準を保った後、急減に転じた。 ハタハタ資源はおよそ30年の周期で変動していると言われてきたが、今のところ、ここ30年もその周期に当てはまると言えそうだ。 このような周期性を持つ資源に対し、私たちは漁獲率をほぼ一定とする漁獲枠管理に取り組んだが、減少期に入るとその進行を止めることができなかった。
2011年12月、男鹿市脇本地区でハタハタを取る漁業者。ハタハタ小型定置網の形状や操業方法には、各漁場に応じた工夫が施されている。ハタハタ漁を営む漁業者が減る中、漁師の知恵が詰まった漁具や漁法を残すことも、将来に向けて重要な課題だ
ハタハタ漁を復活させ、将来にわたり持続するためにも、新たな漁業管理策を今から考えておく必要があるだろう。 1990年代の前半には、資源量が著しく減少していたとみられる状況であったが、そこから3年間の禁漁を経て資源が回復したことを踏まえると、まずは禁漁前後の水準まで資源量を増やすことができれば、その後の資源回復も期待できる。
2019年12月、にかほ市の金浦漁港でハタハタを狙う釣り人。県内のハタハタの釣獲量は、年によっては同じ地区の漁獲量の4~6割もの規模に相当することがある
ハタハタ資源の周期的な変動や漁場変化など、自然要因による不確実性を解消することは将来的にも難しいかもしれない。
しかし、魚価を左右する需要と供給のバランスについては、取れている魚種や漁獲量を漁船のデジタル端末で市場に伝える県の取り組みなどによって解消していきたい。
また、資源の減少期に顕在化した漁場の北上や、深場での産卵など、原因が分かっていない生態についても調査を続ける必要がある。
ハタハタの釣獲量は、同じ地区のハタハタ漁獲量の4~6割もの規模に相当する年があることも分かってきたため、資源に対して釣りが及ぼす影響の大きさを周知・啓発することも重要だ。
禁漁とその後の30年間、実に多くの人々がそれぞれの立場で資源回復を祈り、知恵を絞り、ハタハタ漁の持続に向けて努力を重ねてきた。
過去の多くの蓄積に学びながら、本県の自然と文化に深く根差している県の魚ハタハタの持続的利用に向け、県水産振興センターは調査研究を続けていく。
(県水産振興センター・甲本亮太、松井崇人)
<以下は白木個人の意見/感想です>
漁獲量枠は、これほどまでに試行錯誤の変遷を遂げて来たんですね。
少しでも枠を広げたい沖合漁師と沿岸漁師の攻めぎ合い、原因がはっきりと解らない中でも少しでも資源回復を図りたい県水産振興センター、それぞれの立場で生き残りを賭けて・・・。
まだ、解明できない水深100メートルでの産卵や、そもそもの資源量の大幅減少の原因は海水温上昇なのか、など解らないことも多い中でも、取り敢えず決めて行かなければならないのは何とも大変だと思います。
果たして、八森産のハタハタを食せる日はまた来るのだろうか。
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