本県のハタハタ資源は2010年代前半から減少傾向にあり、近年は記録的な不漁となっています。
今後、ハタハタ資源がどう回復してゆくのかは、現時点では予測できていません。
青森県から富山県までの各県のハタハタ漁獲量の変動の傾向はよく似ており、この海域のハタハタは「日本海北部系群」と呼ばれます。
そして、日本海北部系群の最大の産卵場が本県沿岸なのです。
日本海北部系群の産卵場と稚魚の生息域は、浅場から水深200メートル程度までの沿岸が中心のため、次に資源回復の兆しが現れるのも本県沿岸である可能性が高いのです。
ハタハタ稚魚調査を支えている調査船「千秋丸」
資源の変化を把握する鍵となるのが、県水産振興センター(男鹿市)が続けているハタハタ調査です。
漁獲量が記録的な低迷期にある今、調査への関心と理解を深めてもらうためにも、その内容や成果を紹介したい。
◇ ◇
ハタハタの卵は毎年12月ごろ、岩場に生える海藻に産み付けられます。
水温が10度程度であれば約50日後、1月下旬から2月にかけてふ化します。
稚魚期は、その沖に広がる砂泥底の海域で過ごすことが分かっています。
魚類は発育に従って仔魚(しぎょ)、稚魚、幼魚、成魚と呼び分けるますが、ハタハタに限らず、仔魚期と稚魚期の死亡率がかなり高いのです。
より多くの稚魚が生き残れるかが、資源量の増減に影響します。
毎年春から夏に実施する「稚魚調査」は、そうした初期の生態に関わるデータを集める。産卵場である藻場を出発点に、仔稚魚の分布と成長、餌や海洋環境について調べ、稚魚の生き残りを左右する要因を明らかにすることが目的です。
藻場周辺の岩場にいる仔魚を採集するために設計・製作したソリネット
ふ化後間もない仔魚を採集するため、岩場でも引ける金属製のソリがついた網(ソリネット)と、砂泥底に分布する稚魚を捕らえるのに適した開口板付きの引き網(トロールネット)を用います。
ソリネットは本来、カレイ類など海底面の生物を捕らえるためのもの。海底を少し離れて遊泳するハタハタには適さないため、水産振興センター職員が新たに専用に設計・製作しました。
トロールネットも、釣り餌の小エビを取るのに使われる小型網を参考に職員が製作しました。
海中で水の抵抗を利用して網を開くための開口板は、県内の鉄工所に作ってもらいました。
引き網による調査は1983年度から民間の小型漁船で着手したのが始まり。その後、水産振興センターの第二千秋丸(19トン)で現在の方法を確立して以来、千秋丸(99トン)で調査を継続しています。
最も調査を盛んに行っていた2009年ごろの稚魚調査の流れはこうです。
朝、男鹿の船川港を出港し、調査場所を目指す。調査場所の水深はおよそ10メートルから350メートルまで。
海岸のすぐ近くから、遠い所では約30キロ沖までが対象です。
能代沖など遠方の場合は、調査船での移動に片道2、3時間を要します。
調査場所に着いたら、ワイヤにつないだセンサーを海底まで下ろし、水深ごとの水温や塩分などを観測する。
次に、水深の約3倍の長さのロープにつないだ漁具を船尾から繰り出し、網が海底に着くのを待つ。着底したら漁具が海底から離れないよう、かつ砂泥に食い込みすぎないように船速約1ノット(時速約1・8キロ)でゆっくりと引きます。
1分ごとに水深、船速、緯度経度を記録し、10分間引いたら巻き上げます。
これを多い日で5、6回繰り返します。
水深が深い場所では、1回の操業に1時間を要します。
特に早春の海の天気は変わりやすく、天候が急変し、中断して帰港せざるを得ないこともありました。
また、漁具が海底の岩礁に引っかかったり、砂泥が大量に入ったりして破損したこともあります。
◇ ◇
調査中はロープの張りや船速の変化に集中力を要し、緊張が続く。引き網が無事に終わると、船上は一気に安堵(あんど)感に包まれます。
調査で網に入った生物は全て種類や数を記録します
網を揚げたら、調査で最も楽しみな漁獲物の選別の時間だです。
網に入った生物全ての種類や数を記録し、数が特に多い場合や、珍しい魚が取れた時は保冷してセンターに持ち帰り、詳細に調べます。
主眼はハタハタであるが、同じ場所に棲(す)む生物についても調べることで、ハタハタの生態も詳しく分かるります。
引き網による調査はこれまで八峰町岩館沖から、にかほ市金浦沖までの海域で実施し、多い年で200回以上、網を引きました。
詳細な調査記録が残っている03年以降でみると、16年までの14年間で延べ414日にわたって漁船と調査船の両方による調査を重ねてきました。
そうして見えてきたのは、170種以上もの魚類とともに、秋田の海の季節変化や地形を巧みに利用して生きる、ハタハタの姿でした。
(県水産振興センター・甲本亮太)
<三浦個人の意見/感想です>
ハタハタ漁獲量に対する調査データ、(1)の続きです。
是非参考にしてください。
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