社説:県政この1年 人口社会減、改善へ一歩

県が最重要課題に位置付ける人口減少問題にわずかながら変化の兆しが表れている。
県外への転出者が転入者を上回る「社会減」は今年9月までの1年間で2557人。
過去20年で最少だった。同期間で3千人を下回るのは3年連続。
この流れを一過性にしてはならない。
県は「2025年までに社会減を2千人に抑制する」との目標を掲げている。
社会減は20年前から3千~6千人台で推移。
ただこの3年間は2千人台に縮小している。
今年は県外からの転入者が前年比で651人増えた。
目標の実現に向け一歩前進したと捉えたい。
改善傾向の背景には、新型コロナウイルス禍でのテレワーク浸透に伴う働き方の変化や、地方回帰志向の高まりがあるとみられている。
加えて県外企業の相次ぐ進出や県内工場での生産規模拡大も追い風となった。
2022年度は自動車産業やITサービスを中心に企業進出が堅調だ。
電子部品や医療機器の大手などは増産体制を強化。
こうした動きが県外から人材を呼び込む上で好材料となった。
県内では全国に先駆けて大規模な洋上風力発電が始動。
能代市では製材最大手が新工場の建設を進めている。
秋田市と能代市では、県が再生可能エネルギーで電気を賄う工業団地の整備を計画。
これらも今後、転入者を増やし、本県の賃金水準を向上させる要素となりそうだ。
ただ、県内ではどの産業分野も人材不足が深刻だ。
雇用創出と併せ、Uターン促進などにより人材確保にもっと本腰を入れなければ、社会減の改善ペースは失速しかねない。
改善傾向をより鮮明にするために、県は移住や就職に関する相談窓口をさらに充実させる必要がある。

社会減を抑制する上でもうひとつ欠かせないのが、地場産業を新たな形に進化させ、若者の県外流出を防ぐ取り組みだ。
八峰町で始まったサーモン養殖はその模範と言えよう。
若手漁師が中心となって株式会社を立ち上げ、岩館漁港内のいけすで養殖に挑戦。
稚魚約500匹のうち約400匹を重さ3キロ余りに育てて出荷することに成功、好スタートを切った。規模拡大に向けた今後の展開に期待が高まる。
こうしたチャレンジを他の地域や産業にも広げることが肝要だ。

佐竹敬久知事は26日の記者会見で「変化の激しい年だった」と振り返り、今年の一文字に「激」を選んだ。
ロシアによるウクライナ侵攻や安倍晋三元首相の銃撃事件、本県を襲った記録的大雨といった出来事を挙げた。
知事自身は、比内地鶏や防衛政策、賃金水準などを巡ってたびたび「激」しい言葉で持論を展開し、物議を醸した。
放言で耳目を集めるのでなく、豊富な再生可能エネルギーや高い食料供給力といった本県の優位性を伸ばすことで脚光を浴びるよう、自らの責任をかみ締めて県政運営を担ってもらいたい。

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