秋田魁新報くらし欄の読者投稿コラム「えんぴつ四季」は今年、前身のコーナーが始まった1956年から70年目を迎えた。
暮らしの中で感じたり、考えたりしたことを表現する場として長年親しまれてきた。
常連の人や高齢になって挑戦した人たちに、文章に込めた思いを聞いた。
三輪文子さん(89)八峰町八森
読者同士、心寄せ合う

「書くことが生きがい」と話す三輪さん=八峰町の自宅
投稿を続けて60年。
前身のコーナーも含め、掲載は約200回に上る。
本欄を「読者が互いに励まし、励まされる場所」と話す。
それはまるで見知らぬ誰かと交換日記をするように。
幼い頃から文章を書くのが好きだったが、実家が貧しく、中学校の途中で奉公に出された。
学ぶ機会に恵まれず、病院の調理員として働いていた20代前半、空いた時間に院内にあった新聞を読みながら漢字や言葉を覚えた。
25歳で漁師の敬次さん(故人)と結婚した。
初投稿は30歳。
お手伝いさんの仕事に苦労しているという女性の投稿を読んだのがきっかけだ。
黙っていられず筆を執り、「希望を持って」と呼びかけた。
それからは日々の思いをつづってきた。
家事や子育て、仕事が忙しくても書くことは苦にならなかった。
漁へ出る夫と共に未明に起きて書くことも。
「書きたいという気持ちが常に湧いてくる。生きがいだと思う。」
掲載された文章は全て切り抜いてある。
1983年の日本海中部地震では津波で自宅1階が全壊したが、切り抜き帳は奇跡的に無事だった。
還暦を迎えた年、「防波堤の四季」と題して一冊に。
いつも投稿を楽しみにしてくれている知人たちに配った。
文章を書くのは生活の一部。
午前に家事をこなし、午後ゆっくり新聞を読んで原稿に向かう。
最近は手が震えることもあり頻度は減ったが、昨年「今も残る記憶」のタイトルで投稿した。
2023年夏の記録的大雨で被災した人の文章を読み、エールを届けたいと自らの被災経験に触れながらこの先の平穏を祈った。
「大変そうな人がいれば、背中を押して元気に、笑顔にしたい。文章を書いて思いを伝えられるというのは幸せなこと。」。
これからも、誰かの心に寄り添うような文章を届けたいと願う。
柳原夕子さん(41)美郷町金沢
家族との思い出刻む
子どもたちとパソコン画面を眺める柳原さん(中央)。後ろは母・藤原裕子さん=美郷町の自宅
ノートパソコンに向かうのは子どもたちが寝静まった夜。
思っていることや気になるフレーズを書き留める。
そして、「書きたい」となった時、一気に執筆。
その後数日かけて練り上げるという。
家業を手伝いながら、教育関係の仕事にも携わっている。
「慌ただしい日常だけど、時に立ち止まって思いを形に残しておきたい」と、5年半前に投稿を始めた。
一文は短く、分かりやすく書くことを心がける。
最適な言葉を考えるうち、思考が整理され、心が晴れることもあるという。
印象深い投稿は、昨年掲載された「両親への手紙」。
いつも応援してくれる両親に、尊敬と感謝の気持ちをつづった。
母の藤原裕子さん(69歳)は「知らなかったので、紙面を見てとにかくびっくりしました。
周囲から『自慢の娘さんだね』なんて言われたりして。」と目を潤ませる。
小学6年から6歳まで1男2女を育児中。
子育てがテーマの投稿も多い。
「子どもの前では日々『鬼母』。書いて反省するけれど、なかなか変えられません。」と笑う。
掲載紙は子どもとの「思い出ボックス」に納める。
「読み返して恥ずかしくなることもあるけど、あの時はこう思ったという証しでもあります。いつか大きくなった子どもたちと一緒に読みたいです。」。
金平保夫さん(94)八峰町峰浜
推敲の楽しさ刺激に

米寿で投稿を始めた金平さん(右)と妻の美智子さん。「原稿は必ず妻にチェックしてもらう」と金平さん=八峰町の自宅
米寿で投稿を始めた。
穏やかな筆致で、日常の出来事をユーモラスにつづる。
鉛筆で下書きし、パソコンで練ってから妻・美智子さん(88歳)に目を通してもらう。
「いかに簡潔に思いを伝えられるか、推敲(すいこう)するのが楽しい。」
能代工業高校時代に作文の奥深さにはまった。
「国語の先生に添削されると、分かりやすくなった。文章の難しさを知った。」。
文芸部をつくり、仲間と創作に取り組んだ。
専業農家の頃は地元の農業団体や自治会の役員も務め、筆を持てなかった。
86歳で引退した後、えんぴつ四季に同じ町の女性の名を見つけて奮起。
2019年に初めて投稿した。
孫のために禁煙しようと、たばこ状に巻いた昆布をくわえ、無事たばこと縁を切ったことをつづった。
掲載となり「自分の文が活字になるなんて信じられなかった。」。
旧満州(中国東北部)から引き揚げた妻と、学徒動員で軍需工場に行った自分が「戦争と新型コロナ、どっちが怖い」と話し合った投稿は、教員をしている孫が授業で取り上げてくれたという。
今も畑作業に精を出すが、冬場は机に向かう時間が増える。
「文章を書くことと、掲載されるまでの緊張感は老化防止に役立っているかも。今後も生活の中に話題を探していきたい。」。
<以下は白木個人の意見/感想です>
皆さん大変な時代/環境を過ごされてきたんですね。
それでも、書くことは諦めなかったのは本当に凄いと思います。
私なんか爪垢を煎じて飲まなければならないですね。
是非、今後とも元気に書き続けていただきたいと思います。
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